《尾方蝶嘉 作詞・作曲の作品》

 

  

「蜘蛛の糸」(2009年作)

   ・・・芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を基に創作。極楽と地獄の様子、お釈迦さまの視点、そしてカンダタを通して見る人間の性分が琵琶でどう表現できるか?普遍的なテーマをはらみ、演奏していて私自身もとても面白い作品です。

 

「雪女」

   ・・・小泉八雲の「雪女」を基に創作。雪に閉ざされ凍り付く空間・・・夢か幻か、そこに現れたのは白い衣の美しい女。あとは皆さんご存知の展開。

    恐ろしさと切なさと、語りと琵琶の音でむかしむかしの物語の世界をお楽しみください。

 

「修禅寺物語より - 夜叉の面」

   ・・・岡本綺堂原作「修禅寺物語」を基創作。主人公の面打ち師、夜叉王(やしゃおう)と鬼の別称「夜叉」を掛けています。鎌倉幕府の3代将軍源頼家 の運命を写し取るかの如く、夜叉王の打つ頼家の面には死相が浮かぶ。時の権力者の面に凶相が浮かぶのは自らの技の技の拙さか、と、夜叉王は懊悩しますが、やがて頼家を襲う過酷な出来事に、その面に現れた凶相の意味をすべて理解し・・・。芸術の追求のために我が娘の死をも吸収しようとする夜叉王。ドラマ仕立ての作品です。どっしりとお聞きください

 

「ふくおか四季ごよみ」

   ・・・福岡の祭りや風物を織り込んで創作した作品。制作当時お弟子さんだった女の子のために、かわいらしく作りました。

   福岡の風を感じるやさしい琵琶曲です。

 

「黒塚(安達ケ原)」

  ・・・お能・歌舞伎・文楽でも上演される作品を琵琶曲にしました。「昔を今になさばや都の春の糸桜、色も盛りに咲く頃よ」安達ケ原に住む老婆は旅の僧、裕慶に一夜の宿を提供します。その侘び家で老婆が糸を繰りながら歌う歌は、かつての自分を思い、今の境遇を嘆く。裕慶はそんな老婆を仏心をもって諫めます。薪を取りに出かけた老婆が「決して覗くな」と言い残した部屋を見てしまった裕慶一行。怒り狂った老婆は本性をあらわし・・・!

  人形浄瑠璃「筑前艶恋座」でも上演した作品。

 

「入道死去」(2014創作同年初演)

  ・・・平家物語「入道死去」を基にした作品。「祇園精舎の鐘の音は諸行無常と鳴り響き、沙羅双樹の花の色に盛者必衰を見る如く」。。。この世にならぶ者のない権勢と栄華を誇った平家の命運も、その棟梁たる平清盛の死を境に凋落の一途をたどります。そんな清盛の臨終間際の場面、彼がなおも残したものとは何だったのか。琵琶曲でこの場面をクローズアップしている作品はこれまでになく、面白い作品です。

 

「敦盛最最期の段」

 ・・・平成23年の九州大学HME×福岡市南区役所主催の公演「創作人形浄瑠璃艶競里恋唄」の舞台で、一般の方に琵琶語りをしていただけるよう、「群唱」とでも言うのでしょうか?創作した作品。平家物語の平敦盛が熊谷次郎直実に打たれる場面を哀切込めて作り上げていきました。半年間、毎週金曜日の夜に九州大学に集まり皆さんを指導させていただき、本番の晴れ舞台は参加された皆様の成果に涙ぐみました。これだけで終わるのはもったいない。いつかの機会にまた再演してみたい曲です。

 

「額田王~相聞の歌」(2015年創作同年初演)

 ・・・万葉集のなかから、額田王と大海皇子の相聞(恋のやり取り)の歌を題材に旋律を主にして作った9分ほどの小作品。ありがたいことに、この曲を気に入ってくださる方、多いです。甘い切なさを持った曲。万葉の時代に思いを馳せ、美しく、おおらかでたおやかな空気を織り込めたらと、創作しました。今も昔も人が人を想う心は変わりなく。

 

「仙厓義梵」(2016年創作、2017年初演)

 ・・・(公財)福岡市文化芸術振興財団(FFAC)・福岡市主催の舞台芸術作品「筑前琵琶演奏会~きゃふんとべべん仙厓和尚と音あそび~」のために創作した曲。「知らない博多」をキーワードに、筑前琵琶とともに博多の歴史の堀り起こしができれば、と、博多の日本最初の禅寺「聖福寺」の住職をつとめた江戸時代後期の高僧「仙厓さん」を題材にしました。仙厓さんはユーモアな禅画や逸話で知られる人ですが、その前半生から焦点をあて、仙厓さんが伝えたかったことは何か考えつつ、創作しました。「今に伝えん、生きる喜び」この言葉に行きついたとき、自分が琵琶であらわしていきたいことも明確になりました。

  

 

「北大路魯山人展に寄せて~久遠の花~」(2017年初演)

  …大分県立美術館(OPAM)にて開催された、京都の何必館(かひつかん)コレクションの精髄を展示した同展覧会の関連企画・ロビーコンサート時に披露。

  北大路魯山人の生い立ちに関するエピソードから着想を得て作曲した約6分のインスツルメンツ。

 

 

「羅生門」(2017初演)

 …河竹黙阿弥「戻橋」を原典に新たに琵琶曲として創作しました。平安時代の武将:渡辺源次綱(わたなべのげんじつな)が主人公。

桜花の盛りの頃・・・ある夜、綱が都の羅生門にさしかかった時、一人の女性と出会います。実はこれは愛宕山の鬼:茨木童子の化けた姿。都の春の情景とともに、鬼と綱、鬼の化けた女の3役の語り分けの展開で曲が進んでゆきます。女がやがて本性を現し鬼へ転じて行く過程は演奏していてとても遣り甲斐のある部分です。本性を現した鬼と綱が激戦の末、鬼の腕を切り落とした綱。悪鬼は必ず腕を取り戻すと大音声をあげ、黒雲に乗り稲妻の光の中、愛宕山へ飛び去って行きます。

 

 

「愛(ともしび)を胸に」(2018年初演)

・・・俳優・神田さち子氏の【SEINAN WOMAN OF THE YEAR 2018】受賞に際して、同氏をイメージした創作作品。

 

 

「鏡の井物語」(2019年初演)

・・・福岡市東区馬出に鎮座する翁別神社。その境内に現在もひっそりと存在する「鏡の井」と呼ばれる湧き水があります(現在飲用は不可)。

遠く平安の昔、十六宵姫という人物の伝承とともに生まれ、一度は涸れたこの湧き水は、陰陽師 安倍晴明の神通力により再び見いだされ、時を経て太閤豊臣秀吉の千代の松原での茶会にも使われたと言われます。旧唐津街道・馬出地区の伝説のひとつを琵琶曲にしました。

 

 

「高砂」(謡曲より)(2020年創作・初演)

・・・能「高砂」は相生の松によせて、夫婦の長壽と円満、人世を言祝ぐおめでたい演目。

琵琶曲としてオリジナルアレンジをしました。祝賀会や結婚式などで演奏させていただきます。

 

 

 「黒田長政」(2022年創作・初演)

・・・福岡藩の初代藩主・黒田長政公の幼少期から描き、晩年の長政公の辞世の句「このほどは うき世の旅に迷い出で いまこそかへれ あんらくの空」で締めた楽曲です。今では考えられないほど、生きるということが苛烈だっただろう戦国の世。生ききった男の心境とは、どのようなものだったのでしょうか。

 

 

「太宰府、青嵐」(2022年創作・舞台初演2023年)

・・・幕末の福岡・太宰府がテーマの小曲。文久3年8月18日の政変により京都を追われ、太宰府の延寿王院へ落ち延びてきた五卿。その五卿に邂逅し、その先へと進んでいった人々をあまり深堀することなく取り上げました。幕末は思想・人の動きともにとても難しく広大なテーマのため、作詞にあたり、全く知らなかったことを勉強しながらの作業。できれば流血は描きたくなく、あえて表層的な表現にとどめました。「人々が目指していたものは何だったのか」を考えながらの楽曲創作となりました。

 

「大野山幻想」(2023年創作・初演)

・・・福岡県・太宰府市。かつて遠の朝廷と呼ばれたこの地の中心として存在した太宰府政庁跡の背後にそびえる大野山。

現在は、太宰府市・大野城市・糟屋郡宇美町にまたがる一帯を指し、四王寺山と呼ばれています。

 太宰府大野山にいつの頃からか「在る」琵琶奏者の精霊(しょうりょう)・・・魂が、はるかな昔、太宰府に存在した人々の物語を語り始めるところからこの曲は始まります。

 過去と今、あの世とこの世を行き交い、物語は、今は亡き愛しい人を想う歌・・・挽歌が響く前半と、元号「令和」が生まれるもといとなった梅花の宴を描く後半で構成されます。

陰から陽へ転じながら表現される物語です。

ーーー原詞:眞銅敬介、改編・作曲:尾方蝶嘉

 

「いのちは響き いきてはいたる」(2023年作曲・初演)

・・・世界水泳福岡大会2023年の特別記念展として、福岡アジア美術館で開催された「水のアジア」展。

その展覧会に出展された日本画家・比佐水音氏の作品「いきてはいたる」「響」にインスパイアを受け創作した、語りを伴わない9分ほどのインスツルメント。

五弦琵琶の響きで一滴の水からはじまる物語を紡いでいる。

 

 

 

 

 

 

 

作曲・編曲ー(数字は制作年)

 

 「石堂丸」

 「小督局」

 「小督(2017)」/作詞:柳弥生

 「巴淵」/作詞:柳弥生

 「駒王丸」/作詞:柳弥生 

 「雪中都落」/作詞:柳弥生

 「花に舞う」

 「子どものための枕草子」/「枕草子」より

 「かさじぞう」/作詞:柳弥生

 「知盛と義経(2015)」

 「三石の戦い~国行雛次郎と来宮傳衛門~(2016)」

 「仙厓さんと音あそび(2016)」

 「北大路魯山人展に寄せて~久遠の花~(2017)」 ※大分県立美術館企画展のコンサート演奏曲として制作

 「よみ人知らず(2019)」/作詞 :柳弥生

 「静(2020)」/作詞:矢野信保

 「遊び戯れ今様の道(2020)」/作詞:柳弥生

 「合奏 黒田武士(2021)」

 「祇園精舎(2021)」/詞:平家物語より ※アンビエントミュージック・映像とのコラボレーション

 「国見の唄(2022)」/詞:舒明天皇和歌

 「籠の鳥(2022)」/編詞:早渕良宗

「和歌 ー嘆けとてー(2022)」/西行法師

 

 

 

ほか

 

 

 

ー音源提供協力ー

 

「DARK IN THE WATER」feat.尾方蝶嘉/作曲・ボーカル:DEAD BITES (2017)

・・・「耳なし芳一」の現代ロック版。山口県下関市にて開催「ノセキフェス」出演の東京を中心としたミュージシャングループへの音源提供。

 

 

 

 

 ≪人形浄瑠璃作品≫

 

 

 「艶競里恋唄(琵琶パート)」

 「伊達娘恋緋鹿子」

 「曾根崎心中~道行(2015)

「安珍清姫 化身恋行方(2019)」/道成寺縁起

 

 

 

《海外共同創作作品》

 

2017年 「LINKAGE」インドネシアを代表するダンサームギヨノカシド氏のコンテンポラリーダンス作品について、タイ、インドネシアの伝統楽器とともに音楽・詠唱を担当。「つながり」という作品名そのまま。国と国、人と人、時間と空間をつなぐ作品。

※本作品が、観客の投票にて選ばれる観客賞を受賞。

 

 

2021年 「ゴーストオブツシマ ディレクターズカット版 壱岐之譚」

SONY PlayStationゲーム音楽演奏に参加。

 

2022年 「インターナショナルレインフェスティバル」音源提供。ガムランとのコラボレーション。

 

 

 

≪現代サーカス/Air 楽曲共同創作・演奏≫

 

2019年、フィンランドと日本が外交樹立100周年を迎えた記念事業のひとつとして、フィンランドより現代サーカスアーティスト:イロ―ナ・ヤンティ氏が来日。福岡にて3週間の滞在共同制作が行われた表現舞台の音楽隊の一員として、尾方蝶嘉もプロジェクトに参加。音楽監督・高橋英明氏のもと、日本・筑前琵琶(尾方蝶嘉)、韓国伝統音楽(韓ソリ)、北タイ伝統音楽(ティティポン・カンティオン氏)で演奏出演。

 

 

 

その他演奏曲

 

  

~平家物語より~

 

「祇園精舎」

「那須与一」

「若き敦盛」

「敦盛最期の段(複数人による語り分け曲)」

「壇ノ浦」

「新平家物語」

「知盛と義経」

「屋島の誉れ」

 

~その他演奏履歴~

 

「衣川」

「ああ特別攻撃隊~知覧の桜~」

「海の風景」

「石の枕」

「筬の音(夕鶴)」

「風林火山」

「関ヶ原」

「巌流島の決闘」

「耳なし芳一」

「戦艦大和」

「赤垣源蔵」

「石堂丸」

「博多米一丸」

「純情無法松」

「椎葉の月」

「城山」ほか。